薬学部って大学院行くメリットあるの?デメリットは?



多くの薬学部を設置している大学では、大学院を併設しています。

工学部や理学部などの他の理系学部と同様、薬学部においても卒業後に大学院進学を考える学生は非常に多いです。

一方で「薬学部=薬剤師になる」というイメージがあるなかで、

・薬学部から大学院に行くべきか?

・薬学部で大学院に行くメリットはあるの?デメリットは?

・工学部や理学部の大学院と薬学部の大学院は違うの?

といった疑問をもつ学生も多いようです。

結論を言うと、卒業後の進路や、就職後のキャリアプランによってはメリットはあります。

本記事では、「薬学部って大学院行くメリットあるの?」という点について、整理・説明していきます。






薬学部は4年制と6年制の種類


まず整理しておきたいことして、2019年時点において、薬学部には2種類あるという点です。

一つは6年制の「薬剤師養成課程」です。

この課程を卒業すれば、薬剤師国家試験の受験資格を得ることができます。

いわゆる薬剤師になりたい(薬剤師免許が欲しい)人が行く課程です。

卒業すると、学士号を取得しますが、これは6年分の教育による学士号になります。

就職市場では、工学部や理学部の修士号(大学4年+大学院修士課程2年で取得)とほぼ同じ価値とみなされます。

もう一つは4年制の薬学に関する学問を学ぶ課程です。

この過程では、薬学や生命科学に関する勉強をすることになりますが、薬剤師国家試験の受験資格を得ることはできません。

すなわち、薬剤師になることはできません。

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イメージとしては、工学部や農学部を卒業するのと同じ、ちょっと生命科学や医療よりの勉強ができる学科を想像してもらうといいでしょう。

卒業すると、学士号を取得でき、これは工学部や理学部の学士号と同等です。


薬学系大学院も2種類


さて、多くの薬学部を設置した大学では、薬学系の大学院を設置しています。
大学院の専攻においても、薬学部4年制卒の学生と、6年制卒の学生で扱いが異なります。

6年プラス4年の10年コース:薬剤師+博士号

まず6年制の学部卒の場合、卒業後の大学院は、「大学院博士課程(4年)」となります。

この課程では、基礎的な(実験室での)薬学研究に加えて、薬剤師免許取得者として、長期の病院実習などの実務実習を行います。

このルートを通ると、学部と合わせて合計10年間の教育で、博士号を取得することになります。

一段階、深いところまで専門性を身に着けた薬剤師を要請することを主な目的とした課程です。

4年プラス2年プラス3年の9年コース

4年制の学部卒の場合、卒業後の大学院は、まず「大学院博士前期課程(2年)」に進学することになります。

この課程を修了すると、修士号を取得できます。

この時点で民間企業や公務員として就職することも可能ですが、さらに研究を深めたい場合は「大学院博士後期課程(3年)」に進学することになります。

この課程は、工学部や理学部と同様、実験室での研究活動を通して、高い「研究能力」を身に着けた、研究者のタマゴを養成することが目的です。

このルートでは、学部4年、修士2年、そして博士3年の合計9年間の教育を受けることができます。



薬学部で大学院に行くメリットはある?

6年制薬学部卒の場合

大学院に行かずとも「薬剤師免許」をゲットできるので、仕事探しには困りません。

プラス4年大学院にいったことで得られるメリットはなんでしょう。

このコースでは、4年間の大学院博士課程の中で、関連する大学病院や、地域の中核病院にて、長期の病院実習を受けることができます。

そして、書類上は、高度な専門教育を実習の場で積んだ、一つ上のレベルの薬剤師とみなされます。

これは、もし大学病院や、比較的大きな病院の薬剤部に就職を希望している場合は非常に有利になります。

地域にもよりますが、一般的に学部卒の新卒の薬剤師が、いきなり地域で中核を担う大病院の薬剤部に採用されるのは非常に難しいのです。

勤務を始めてからも、薬剤部の管理薬剤師や、薬剤部長といったポジションを得て、薬剤師としてのキャリアを開発するチャンスにも恵まれます。

これが、大学院進学の最大のメリットです。

また、博士号を取得していれば、大学の研究室で助教のポストを得たり、製薬企業の研究職や臨床開発職に採用される可能性もぐんと上がります。

実際一部の製薬企業では、6年制の薬学部卒業生(学士)については、研究職の採用対象外としていうこともあります。

言い方を変えると、ふつうの薬剤師として「田舎の調剤薬局でのんびり働きたい」、或いは「街のドラッグストアで働きたい」という方は、大学院にいってもメリットは感じられないということですね。




4年制薬学部卒の場合


このコースでは、通常の理系学部卒業者と考え方は同じです、

博士前期課程や、博士後期課程にすすんでさらに研究を深めたいと考えて進学するのが通常です。

就職活動に失敗したので、とりあえず2年間の博士前期課程に進学、さらに就職活動に失敗したので、追加で3年間の博士後期課程…というのもありですね。

製薬会社の研究職や臨床開発職に採用されやすいのは、博士前期課程卒(修士)または博士後期課程卒(博士)です。

4年卒の学士で、これらの職種に採用されることは非常にまれです。

昔は、博士後期課程卒(博士)よりも、博士前期課程卒(修士)が有利と言われていました。

いまでも、国内企業ではその傾向はあるようですが、一部の外資系製薬企業では、博士後期課程卒(博士)のほうを好んで採用することもあります。

研究職や臨床開発職を目指すなら、十分なメリットはあるということです。

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一方で、製薬企業のMRや、別業界の営業、事務職などを志望しているなら、特に大学院に進学するメリットはありません。

薬学部で大学院に行くデメリット


大学院に行ってたくさん勉強するのはいいことですが、デメリットも考えてみます。

お金がかかる

第一にはお金の問題です。

大学院に2~5年間通うことになるので、当然学費による経済的負担が増します。

学部時代に私立大学の薬学部に通っていた場合はすでにかなりの学費を払っているでしょうから、よほど裕福でない限り、慎重になりますよね。

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本来仕事をして給与を得てもおかしくない期間を、学業に費やすのでその分の収入分も失うことになります。



年齢の問題

博士号まで取得すると、通算9年または10年学生生活を送ることになります。

はれて博士号を取得した際には、少なくとも27~28歳になっています。

浪人していれば30歳くらいになっているケースも。

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友人たちは結婚して、すでに子供ができていたりする年齢ですので、どうしても取り残されたと感じてしまう人もいます。

修了後の年齢も考慮して、自分の人生プラン全体をみながら検討しましょう。

キャリアプランに合致していればメリットは十分ある


とはいえ、昔とくらべて、女性も男性も大学院への進学をする人は増えています。
また、社会人コースを設けて、働きながら大学院で学ぶ学生を受け入れる大学もたくさんあります。

あまりデメリットばかりを気にせずに、自分のキャリアプランに合致していると思えれば(経済的に可能であれば)、どんどん大学院で学んでいいと個人的には考えています。

では。

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