薬剤師は20年後飽和って20年前に言われてたのに「MRいらない」が先だった件



私は20年前に薬学部の学生でした。
当時から、(いやもっと前から)、「20年後には薬剤師はなくなるかもしれない」「薬剤師は20年後には飽和して、供給過剰になっている」なんて言われていました。

その当時、私を含めて多くの薬学生が危機感を感じ、できれば製薬企業や公務員となる道を模索していました。

特に人気だったのが製薬企業のMR(Medical Representative)です。
給料も高いし、製薬企業という安定した業界。
薬剤師免許を持っていれば、大手でも簡単に内定がでる。
そんな最高な仕事でした。

でも、数年前から雲行きが怪しいです。

ここ数年で、製薬企業において大規模な「MR削減」がすすんでいます。
製薬企業の営業職であるMRがいらない、過剰だから削減するというのです。

各社リストラの嵐です。
すべてがMR「だけ」をねらったリストラではありませんが、製薬企業の従業員の多くはMRですので、実質MR削減ということです。

MRは薬学部を卒業した学生にもとても人気のあった職業で、私の知り合いでMRとなった人もたくさんいます。

20年前、「20年後には薬剤師はなくなるかもしれない」って言ってたのに。
だからMRになったのに。
そんな人もいたことでしょう。

本記事では、「もうMRいらない」「MR削減しよう」となった背景について記載しています。

最近「20年後には薬剤師は不要になる、AIにとって代わられる」なんて言われていますよね。
でも、心配して将来は予測できません。
意外と薬剤師の仕事は大丈夫だと思っています。





昔は「MR=大人気」「薬剤師=20年後消える」だった

製薬企業の営業職であるMR(Medical Representative)は年収が高く、とても人気のある(あった)職業です。

20年後には飽和してしまうといわれていた薬剤師とは大違いです。

営業職とはいえ、専門的な医薬品、医学に関する知識が必要な職種であったため、理系学部、特に薬学部卒の薬剤師免許保有者であれば、大企業に採用されることも容易でした。

薬剤師の平均年収が400 ~ 600万円ほどであるのに対し、製薬大手のMRであれば20代で年収1000万円を超えることも不可能ではなかったのです。

また、こちらの記事でも記載していますが、一部「医師に取り入るため、MRは顔採用だ」という噂が立つほど、たとえ文系学部卒であろうとも、容姿の優れた学生を採用していた時代があり、各社が学生を取り合って大量採用をしていた職種です。

MR顔採用に文句あるやつちょっと来い【面接官として参加した結果】

当時は、MRはいらないどころか、MR不足でとりあえず文系卒でもいいから人数を確保して、各社で採用後に教育するということが当然でした。

将来的にMRがいらないとか削減されることなど、予想していませんでした。

まさか、20年後には薬剤師よりも辛い運命をたどるとは…

「20年後は薬剤師飽和」に危機感を感じてMRとして就職

20年前、私が学生だったこと、多くの後輩、同級生、先輩たちが卒業後に薬剤師にならずに、MRとして就職していきました。

当時から「20年後は薬剤師はどうなるかわからないよ」と先輩も、大学の教員も言っていたからです。

また、MRとしての営業職に魅力を感じたケースも当然あります。
薬剤師の仕事は退屈なイメージですしね。

事実、当時は以下のように「20年後は薬剤師が飽和する」ことの危機感があおられていました。
  • 薬学部の6年制化により、近い将来「優秀な」薬剤師が大量に生まれる
  • 規制緩和による私立大学薬学部の増加(薬学部の定員増)による、薬剤師過剰供給
  • 看護師への調剤権の付与がされるのではないか

また、同じ製薬企業でも、薬剤師免許を保有していれば簡単にMRとして採用されるため、はじめは研究職や臨床開発職を志望していたけれど、MRに路線変更する例も非常に多くありました。

MRは外勤手当等豊富ですので、彼らの羽振りはかなり良かったと思います。

それが現代においては多くの製薬大手では大規模リストラが進行し、MR数の削減が進行しています。





薬剤師より先にMRの削減がすすんでいる

5年ほど前から、一部の超好調な製薬企業を除き、有名どころの大手製薬企業でリストラによる人員削減がすすんでいます。

直近の2015年~2018年でもアステラス製薬や仏サノフィ、米MSDなどの大手で早期退職者の大規模な募集が行われています。

2015年~2018年に行われた大規模な人員削減
サノフィ:約300人
アステラス製薬:約600人
ベーリンガーインゲルハイム:約300人
MSD: 約400人
大日本住友製薬:約100人
田辺三菱製薬:約600人

主要なターゲットは社員の大部分を占めるMRです。

MRはもういらないと判断した、大手企業が体力のあるうちに割り増し退職金を支払ってでも削減をすすめているということです。

MR削減が始まった理由、薬剤師がまだ必要な理由

各社がMRを削減しているのには理由があります。

ここ数年で、現在の大手製薬企業が販売していた主力製品が相次いて特許切れを起こしました。

これらの製薬企業は15年ほど前、「ブロックバスター」と呼ばれる1製品で数百億~数千億円の売り上げをたたき出す製品を開発し、それにより企業規模を大きくするというビジネスモデルで成功を収めた企業なのです。

20年ほど前に私が学生だったころから、大量にMRを必要としていたのは、この「ブロックバスター」の発売と、販売拡大のためだったのです。

結局あとに続く製品開発に失敗、遅れがでたため、売るものがありません。

その結果、大量に雇用したMRはもう、いらない、削減しよう、ということになったのです。

つまりMR=新薬(できれば)を売るために必要なんです。

一方、薬剤師は、新薬が出ようが、後発品だろうが、処方箋の数に応じて必要です。
20年後も、30年後も、医者が処方箋を書く限り、必要な仕事(のはず)です。






削減されたMRはどこに?薬剤師か?

私の知り合いでも、勤務先企業の人員削減案に乗っかり、最近転職した人が何人かいました。

運よく他社のMRとして採用された人もいます。
この人たちはひとまず、MRとして延命できたことになりますが、転職先が人員削減をいつ始めるか不安だといっていました。

薬剤師免許を保有していた方のなかには、薬剤師として第二のキャリアをスタートさせる人もいたようですが、もともと高収入のMRだったため、家族に迷惑をかけるのがつらいようです。

いったん裕福なエリートサラリーマンの味をしっているだけにつらいものがあるのだそう。

MRとしても残れない、薬剤師免許もない、非薬学系の学部出身者はかなりつらいようです。

特に文系出身者は、別業界の営業職への道を選んだかたもいたようですが、年収面や、慣れない仕事、新しいスキルが必要とのことで大変そうでした。

MRはもういらない、でもMSLが必要

製薬企業はMRを削減した代わりに、より高度な医学的知識を有し、医師と対等にチームを組めるMSL(Medical Science Liaison)という人員を増やそうとしています。

MR体制の時代よりも少数精鋭、より高度な専門性の職種で、薬学系の修士卒や博士号取得者を中心とした人員のチームですが、一部の経験豊富なMRはMSLに転身して活躍しています。





そのうちMSLも「いらない、削減だ」となるのか

しかし、MRという職種が作られる前、製薬企業の営業担当は「プロパー」と呼ばれていました。
「プロパー」よりもより専門性の高い営業担当者を、ということでMRができた歴史があります。
そしていま、「MRはいらない、削減だ」となり、より専門性の高いMSL部隊ができたということです。
数年後には「MSLはいらない、削減だ」と言われているかもしれません。

現在、就職活動中の学生、在学中の薬学部学生はしっかりと業界の今後の方向性を見極めて、キャリア形成をしていってもらいたいものです。

薬剤師は今後の20年でどうなるの?

MRやMSLが製薬企業の新薬開発状況で今後の行方が決まりそうですね。

一方、薬剤師は30~40年まえから、「20年後にはなくなる、飽和する」と言われているみたいです。
20年後にはAIに代わっているかも、なんて声もあります。

でも、基本的には薬剤師の仕事は、処方箋に基づいて医薬品を提供する仕事です。
処方箋がある限りなくならないと思います。

20年後、薬剤師の求人倍率に多少影響がでているかもしれません。
20年後、薬剤師の給料が少し下がっているかもしれません。
20年後、薬剤師の役割がすこし変わっているかもしれません。
20年後、一部の医薬品を看護師が取り扱っているかもしれません。

でも、たぶん、20年後も薬剤師は薬剤師としてやっていけると思います。
国家資格なんだから、一斉に失職なんてありえないでしょう。

大丈夫大丈夫ですよ。

では。








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