薬剤師が働きながら大学院のメリットを解説する

6年制の薬学部を卒業して薬剤師国家試験に合格すると、多くの卒業生は薬剤師として社会に出ていきます。

卒業後に、そのまま大学院博士課程(4年)に進学してさらに研究を深めていくこともできるのですが、6年間勉強したあと、さらに4年間となると躊躇するひとが大半です。

学費の問題もあるし、合計10年間も大学と大学院に通うと、卒業時点では最短でも28歳ですから、もっとはやく社会に出たいと考えてしまいます。

そのため、いったん薬剤師になったけど、やっぱり大学院に進学したかった…、もっと研究したかった…という人がいます。

そんな薬剤師には、働きながら大学院に行く=大学院の社会人博士課程という選択肢があります。

でも、薬剤師が薬剤師が働きながら大学院に行くってどういうことなんでしょうか。

それってありなの?
やり遂げられる?
大変なの?

本記事では、薬剤師が働きながら大学院に行くかどうか、迷っている薬剤師たちのために、疑問点、不安な点を解説・整理していきます。


薬剤師なら働きながら大学院に行くことは可能:4つの理由


基本的に、薬学部が薬剤師として勤務しながら大学院にいって博士号を取得することはできます。

むしろ他業種や他の分野(工学部、理学部等)よりも容易です。


薬剤師なら大学院に行く時間的余裕がある

働きながら大学院に行くなら何よりも時間が必要ですよね。

薬剤師であれば勤務先は調剤薬局や病院ですよね。

多くの中小企業(ブラック企業含む)と比較すると、自由になる時間がたくさんあります。

突発的な残業や休日の勤務も少ないため、計画的に大学院での活動(研究、勉強)に時間を割くことができます。

薬剤師なら大学院に行く金銭的余裕がある

学校教育をうけるとなると気になるのは学費、費用の面です。

薬学部=学費高いというのは有名な話ですが…

薬学部の学費高い!必要な親の年収は?お金がないと薬剤師になれないの?

実は私立の薬学部であっても、大学院の学費は年間70~100万円程度です。
学部よりもずっと安いんですね。

薬剤師として勤務していれば、1年目からそれなりの給与がもらえているはずです。

大学院に行く期間は、節約したり、貯金はしないと割り切れば十分支払うことができます。
この点は、普通の大卒サラリーマンや、研修医を経る医師と比較しても優遇されています。




薬剤師なら出身大学の大学院に行くことができる


どの大学の社会人大学院に行くか?というのは重要なポイントです。

働きながらとなると、こちらの事情を考慮してサポートしてくれる大学院、研究室が好ましいですよね。

通学時間も短いほうがいいでしょう。

いろいろな考え方がありますが、もし、学部時代に所属していた研究室との関係が良好であれば、大学院では「出身大学の出身研究室」に所属するのが、博士号取得の近道である場合があります。

ただ、一般企業に就職していれば勤務地が出身大学から遠方で、距離的な問題で出身研究室での就学が不可能というケースがあります。

その点、薬剤師であれば基本的には勤務地を選びません。

出身大学の近くに勤務、居住すれば、通勤時間を大学院での研究・勉強に充てることができます。


大学側が薬剤師の社会人学生を熱烈歓迎中

2006年に薬学部が6年生になった際に、大学、アカデミアがもっとも危惧したことが、「大学院学生の減少」、「大学院の存続危機」です。

以前は薬学部が4年、大学院修士課程2年、博士課程3年でした。

修士と博士の5年間、大学院生という無料の労働力で大学院研究が支えられていました。

しかし学部教育が6年間となり、さらに4年間進学する学生は減少したからです。

学部の6年間は病院や薬局での実務実習や国家試験の勉強が詰まっています。

当然、薬学領域の研究活動が制限されてしまうのです。

そこで、多くの大学では、社会人大学院の学生歓迎、働きながらの就学をサポートしますよという姿勢を打ち出しました。

それまでの閉鎖的な姿勢をあらため、他大学の出身者にもオープンになっています。

入学後の講義を週末や夜間、一定期間に集中して行うなど、薬剤師が働きながら就学できるよう配慮しています。

また、「きちんと卒業して博士を取得できる」ように責任をもってサポートするようになりました(以前は自己責任、できない奴・ついてこれない奴は博士号取得できなくても知らないよという大学も多かったです)。


薬剤師が働きながら大学院に行くことのメリット


昔は、薬剤師に博士号なんていらないでしょ、なんて風潮がありましたが、薬学部が6年制になってから徐々に変わりつつあります。

というのも、昔は4年制の学部卒の薬剤師に加えて、プラス2年間の修士課程を修了した(ちょっと高学歴?)薬剤師の2段階が主でした。

不思議なもので、すべての薬剤師が6年間の勉強をしている、という状況になると、プラス4年間勉強した「ちょっと高学歴」薬剤師が出てくるのです。

それによって自然に、博士号を取得した薬剤師が、受け入れられつつあります。

薬剤師でも働きながら研究ができる

普通の病院や薬局で働いていると、研究はほとんどできません。

本当は研究がもっとしたかった、と後悔しているひともいるでしょう。

そういう人は、薬剤師として働きながら大学院に行くというのがベストです。

好きな人にとっては、研究活動は何よりも楽しいですからね。

薬剤師でも大学院に行けば研究室で研究ができますし、学会発表や論文の執筆ができます。

運が良ければ声がかかってそのままアカデミアのポストに就けるチャンスもめぐってきます。




博士号を取得した薬剤師の待遇

薬局でも病院でも、新卒時点で博士号を取得していれば、年齢にあわせて若干初任給が高く設定されることがあります。

薬剤師が働きながら大学院にいって、博士号を取得したら即座に給与が上がるなんてことはないと思います。

ただし、その後のキャリアとして、地域の中核病院に移ったり、管理薬剤師や薬剤部長などのポストを狙うのであれば博士号はプラスに働きますので、その点はメリットになります。

勤務先の外で人脈が広がる

薬剤師として働いているとどうしても仕事を通じての人脈が制限されてしまいます。

大学院に行けば、大学の先生や、同じように働きながら社会人大学院に来た他の薬剤師、製薬企業の研究員なんかと知り合うことができますよね。

学会に行けば、他大学の研究者とも会えます。
この時にしっかりと人脈を作っておけば、その後に役に立つこともあるのです。



薬剤師が働きながら大学院に行くことはお勧めです


個人的には薬剤師が働きながら大学院に行くことには大賛成です。

私自身、大学での大好きだったので、研究の楽しさもわかります。
薬学分野の研究にも貢献できます。

博士号を取得したとしても、すぐに薬剤師の職場で評価されることは少ないと思いますが、だんだん時代が変わっています。

若いうちに博士号をとっておいたほうが将来安泰かもしれませんよ。

薬剤師さんがたくさん勉強してたら、患者の立場としても安心です。

では。


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