調剤薬局が潰れるのは薬剤師にとって悪い話ではない

町中を歩けばそこら中に調剤薬局があります。

大手の調剤薬局チェーンや、調剤業務を行う大手のドラッグストアもたくさんあります。
いまや日本には、コンビニと同じくらいの調剤薬局が存在しています。

医薬分業といって、病院での「診断」や「治療」と「調剤業務」を分離、独立させる仕組みが数十年にわたり、進められてきた結果です。

また、日本社会の高齢化とともに薬局、薬剤師の需要が増大していることも要因です。

しかし、今後もこのペースで調剤薬局が増え続けるかというとそうではありません。

調剤薬局市場はほぼ成熟、調剤薬局の数はもうじき頭打ちになるといわれています。

今後、調剤薬局の中には潰れてしまい、倒産というところも出てきます。

現役薬剤師や薬学生にとって恐ろしい話ですが、実はそうでもありません。

本記事では、今後訪れるであろう「調剤薬局が潰れる」時代が、薬剤師にとってそれほど悪い話でもない点について整理しています。



日本では調剤薬局が増えた


冒頭でも書いていますが、2019年現在、日本には約6万軒の調剤薬局が存在しています。
ちなみにコンビニは約5万5千軒です。

すごい数です。

ここ数年、調剤薬局数は毎年1%弱の割合で増加しています。

この背景には、政府が長年推し進めてきた「医薬分業」の仕組みがあります。

欧州では古くから取り入れられた仕組みで、病気の診断と処方箋発行を行う医師と、調剤を行う薬剤師をそれぞれ(対等に)独立させ、患者の利益を守るという考え方に基づいています。

これにより(薬剤師が医師と対等かどうかはさておき)、大病院の目の前の「門前薬局」をはじめ、各地に調剤薬局が作られました。

調剤薬局が供給過剰、頭打ちか


社会の急速な高齢化もあって、調剤薬局の増加傾向はもうしばらく続くといわれています。

一応、増加率は鈍化してきており、もうじき頭打ちになるといわれていますが、このまま調剤薬局が増加し続けるといずれ供給過剰になってしまいますよね。

近年の医療費削減政策により後発品の促進や調剤報酬改定が進められ、いわゆる薬局の利ざやは減少傾向にあります。

中小や個人の調剤薬局の中には赤字経営、最悪潰れてしまうところも出ているようです。

調剤薬局のM&Aでチェーン店化が進んでいる


一方で、調剤薬局業界ではM&Aが盛んです。

潰れるくらいなら「大手の調剤薬局チェーンの傘下に収まる」と考える個人経営の調剤薬局が増えているのです。


調剤薬局が潰れるのは薬剤師にとって悪い話ではない


調剤薬局が潰れる時代、調剤薬局業界がM&Aで再編と聞くと、なんだかネガティブなイメージですよね。

でも薬剤師にとって悪い話ばかりではありません。
メリットを次にあげていきます。



薬剤師不足店舗の解消


国家試験に合格して毎年1万人弱の薬剤師が新たに誕生していますが、地域によってはまだまだ薬剤師の人では不足しています。

地方の高齢者の多い地域で、一人の薬剤師が調剤と監査をこなさなければならない地域もあります。

これらの薬局が潰れて、あるいはM&Aによって大手チェーン薬局が参入すれば、本社や他の店舗からの人材を補充することで、薬剤師不足を解消することができます。

チェーン展開によって、人材の適切な分配ができるのです。

薬局経営の利益確保ができる

チェーン展開している調剤薬局はいわば大企業です。

大企業ですので、各種のビジネスプロセスが効率化、最適化されています。

例えば、医薬品を卸やメーカーから仕入れる際にも、本社での大量調達により仕入れ価格を抑えて利益を最大化することができます。

在庫を本社で一括管理することで、店舗数が多ければ多いほど在庫リスクを減らすことができます。

個人経営の調剤薬局ではこうはいきません。

零細企業のようなものです。

医薬品の卸との価格交渉も難しいでしょうし、在庫リスクも非常に大きいです。

調剤薬局といえど、ビジネスですので、普通の小売業と同じく大企業のほうが利益確保がしやすいのです。

薬剤師の待遇改善

零細企業で働くのと、大企業で働くのはどちらが待遇がいいでしょうか。
もちろん大企業です。

経営難の調剤薬局が潰れて、あるい大企業の傘下になることは薬剤師の待遇(給与、福利厚生、雇用の安定性)の面で最終的にメリットになる部分が出てきます(たまにある、ド田舎の調剤薬局でかなりの高年収案件は今後減っていくでしょうが)。





調剤薬局業界は影響力の増大が必須


これまで、調剤薬局の業務を含めた医療行為は聖域とされていました。

何も考えずに適当に経営してもある程度の利益を出すことができたのです。

今後は、大手調剤薬局チェーンのリードの下、経営の効率化、調剤薬局業界としてのビジネス、政治への影響力を高めていく必要があるのです。

これは最終的には従事している薬剤師にとってもメリットとなるということです。

調剤薬局が潰れる時代の先には、薬剤師にとって明るい未来が待っています。

では。


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