ジェネリック医薬品で薬局が儲かるからくり【儲かってますが何か?】

なんか最近やたら薬局でジェネリック医薬品を勧められる。

もしかしてジェネリック医薬品に変えたほうが薬局が儲かるの?だから勧めてくるのかな。

そんな疑問をよく耳にします。

結論を言うと、ジェネリック医薬品に切り替えてもらったところで、薬局が大きく儲かるということはありません。

ただし、ジェネリック医薬品に切り替えることで、薬局にもある程度メリットがあるのは事実です。



現在、日本社会の高齢化によって、今後社会保障費が増大することが予測されています。

政府やジェネリック医薬品の使用促進や診療報酬の見直しを進めて、社会保障費の抑制を進めており、

「高齢者が増える=医療費が増える」ので医療関係の職業は安泰という単純な構図ではなくなってきています。

過疎祖や人口減少のによって病院や薬局が経営難で倒産する地域もあります。

一方で、ジェネリック医薬品の使用促進をうまく利用して、利益を出している薬局もあるようです。

「ジェネリック医薬品って安いんでしょう、安いものを売ってどうして薬局の利益が増えるの?」という疑問をもつ人もいますよね。

本記事では、一部の薬局がジェネリック医薬品の推進先によって利益を出しているカラクリを解説しています。


ジェネリック医薬品の販売価格は安い


ここ数年、政府が強く推進しているジェネリック医薬品は馴染み深いものとなりました。

推進している理由は、安いから。

新薬として販売されていた医薬品(先発品)の特許が切れた後に、ジェネリック医薬品メーカーがコストをおさえて開発した医薬品です。

そのため、ジェネリック医薬品の販売価格は3~7割程度になります。

厚生労働省による薬価調査(平成30年9月)によると、ジェネリック医薬品の数量シェアは72.6%だったそうです。

実際に処方されている医薬品の7割以上がジェネリック医薬品ということです。

一般的に、お店は高い商品を売れば利益も大きくなりますし、逆に安い商品を売れっても利益は小さくなります。

利益率を10%とすれば、1000円の商品で利益100円ですが、500円の商品だったら利益は50円しかありません。

では、なぜ一部の薬局ではジェネリック医薬品の使用が促進されたにも関わらず利益を維持することができるのでしょうか。


高齢化社会における薬剤費増大


理由のひとつは、高齢化によって病院にかかる人口が増え、単純に必要な薬剤量が増えたということです。

2000年に約6兆円だった日本の薬剤費は2017年には10兆円近くにまで膨れ上がりました。

出典:全国保険医団体連合会
参照URL:全国保険医団体連合会(https://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://hodanren.doc-net.or.jp/news/tyousa/181115_srh_med.pdf&ved=2ahUKEwi3h_34j_bgAhUBU7wKHSFHDi0QFjADegQIBBAB&usg=AOvVaw0bNTKtHUFlH7qKNCxzBTcR)

急激に市場そのものが成長しているのです。

(この時期は大型の生活習慣病治療薬が多数開発、上市され、医療が進歩した時代でもあるのですが。)

たくさん患者がくる、たくさん医薬品が売れるので、薬局も利益がでるということです。

薬局がジェネリック医薬品で儲けるからくり


たくさん患者が来て、たくさん医薬品が売れても、ジェネリック医薬品の推進によって価格が下がると売り上げは伸びません。

しかし、一部の薬局では、うまく制度を利用して儲け、利益を維持できています。

なぜでしょう。

薬局経営には、単純な商店とは異なる事情があるのです。

ジェネリック医薬品の調剤報酬で儲ける薬局

薬局は、処方箋に基づいて医薬品を調剤し、患者に対して服薬指導をします。

患者ごとにどの医薬品をいつ、どれくらい調剤したかのデータを管理、保存しておき、以後の治療に活用します。

こういった行為一つ一つに対して、薬局・薬剤師は報酬を請求することができるのです。

一般の人であれば、請求された報酬の3割が患者負担、7割が健康保険負担となって薬局の収入となります。

政府はジェネリック医薬品の使用を推進するために、ジェネリック医薬品をたくさん調剤した薬局に、報酬を上乗せして請求する権限を与えました。

後発医薬品調剤体制加算といいます。

ジェネリック医薬品を頑張ってたくさん処方すると、数量ベースで処方箋一枚当たり、「75%以上で180円」「80%以上で220円点」「85%以上で260円」の3段階で報酬上乗せができるのです。

例えば、ある薬局がジェネリック医薬品の数量ベース80%以上を達成し、1か月の処方箋が3000枚だとすると、220円x3000枚=660,000円を追加請求することができ、そのまま純利益に上乗せされることになります。

各薬局が、しきりにジェネリック医薬品を勧めてくる理由はこれです。

ジェネリック医薬品の薬価差益で儲ける薬局

調剤報酬にプラスして、薬局の利益となるのが薬価差益です。

これは医薬品の、薬局での販売額(薬価)と医薬品メーカー、卸からの仕入れ値(卸価格)の差額です。

通常の商店と同じく、販売額と仕入れ値の関係ですね。

100円で販売するものを70円で仕入れていれば100 -70 = 30円の利益になりますし、
100円で販売するものを50円で仕入れていれば100 -50 = 50円の利益です。

医薬品が通常の商品と異なる点は、患者への販売額(薬価)が法で定められており、割引などはできません。

そこで、薬局としては、卸価格を安くすれば安くするほど利益がでる、という構図になっています。

新薬の場合(卸の業者はいくつかあるものの)、一つのメーカーしか製品を製造できませんので、卸価格が大幅値引きになることはありません。

しかし、ひとたび特許が切れると、複数の後発品メーカーが同じ製品を製造販売することになります。

各社は、自社製品を薬局においてもらいたいがために努力をするのですが、「卸価格を下げて価格競争を行う」しかありません。

だってどれも「同じ効果、同じ安全性」のジェネリック医薬品ですから。

この価格競争は、ジェネリック医薬品が浸透すればするほど増していきます。

患者への販売価格(薬価)は変わらず、薬局の利益のみが増えていくのです。

特に、販売力、力の強い薬局チェーンなどは、交渉によって卸価格を大きく引き下げ、薬価差益を大きくすることができます。

実際に、販売実績があればさらに交渉をしやすくなるでしょう。

その結果、一部の薬局は下のサイクルをうまく循環させることができるようになります。

頑張ってジェネリック医薬品をたくさん売る→卸やジェネリック医薬品メーカーと有利に交渉する→卸価格を下げて薬価差益を大きくして利益を出す→頑張って、さらにジェネリック医薬品を売る→…

どんどんジェネリック医薬品の販売(処方)実績を伸ばして、卸やメーカーへの影響力を高めていくのです。


ジェネリック医薬品で儲ける薬局以外は淘汰される


今後、上記のような制度上のメリットを活用して、儲けて(利益を出して)生き残っていく薬局と、対応できずに淘汰されていく薬局に二極化されています。

高齢化と、社会保障費の抑制により、医療業界は少ない予算・利益で多くの患者に対応することが求められ、業務の効率化と利益の確が必須になるからです。

(政府のジェネリック医薬品推進策を利用した、薬局の儲け方が健全か不健全かの議論は置いておきます)

すべの国民が、十分な医療、治療の機会にアクセスできる環境が今後も維持されることを願います。

では。


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