薬学部卒で研究職に就くのがどんどん難しくなってきた歴史を整理した


薬学部を卒業したら皆が薬剤師になるわけではありません。

一定数の学生は、将来薬学分野の研究職に就きたいと考えています。
大学や、製薬企業で新薬の開発研究ですね。

工学部や農学部出身でも、薬学研究者になることはできますが、やっぱり「薬学」に特化した勉強をした方が、薬学系の研究職にはつきやすそうなものです…。

しかし、現実は異なります。
以前は薬学系の研究職といえば、薬学部出身者でした。
しかし、その割合が、どんどん減少してきた歴史があります。

現在では、薬学部出身で、薬学の研究職に就く人はいますが、昔ほど多くありません。

本記事では、薬学部卒で研究職に就くのがどんどん難しくなってきた歴史を整理しています。
将来薬学分野の研究職に就きたいと考えている、若い学生たちの参考になれば幸いです。




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薬学部出身者が就く研究職の選択肢

薬学部を出て、薬学系の研究職に就くためには、以下の3つの選択肢があります。

  • 大学の薬学部で教員になる
  • 公的な研究機関で、研究職のポストに就く
  • 民間の製薬企業で研究職として採用される

あとは、純粋な「薬学研究職」ではありませんが、

  • 警察機関の一つである科学捜査研究所に就職する
  • 公務員試験を受け自治体の「薬剤師職」で採用されて、運よく保健所や環境研究所に配属される

といった方法もあります。

このうち、圧倒的に募集枠が大きくく、学生にとってチャンスがある確実性の高いものは「民間の製薬企業で研究職として採用される」になります。
給与水準も高く、福利厚生もしっかりしていて、任期もないので安心ですしね。

しかし、この「民間の製薬企業で研究職として採用される」ことが、薬学部出身者にとってどんどん難しくなってきた歴史があるのです。

2019年現在では、かなり難しい、狭き門となってしまいました。

薬学部卒で研究職に就くのは昔は簡単だった

製薬企業の研究職に採用される学部と言えば、数十年前は「薬学部出身者」と決まっていました。
薬学部卒であれば製薬企業、化学系工学部卒であれば化学メーカー、機械系工学部卒であれば機械メーカー、農学部卒であれば食品や畜産系企業、といった具合にすみわけがなされていたんですね。

これは、採用側企業も、応募する学生側もそういう意識でした。

また、研究職採用といえば、大学院の修士卒または博士卒が前提となっていますよね。

しかし薬学部の場合、数十年前は大学院の進学率がそれほど高くなかったため、「学部卒」で製薬企業の研究職に内定をもらうのもごくごく普通だったのです。

私の会社でも、50代以上くらいになると、学部卒で会社に入った、薬学系出身者がとても多いです。



研究職で薬学部出身者と競合し始めた化学・工学系

かつては薬学系であれば、すんなりと製薬企業の研究職に採用されていたものですが、転機が訪れます。

1990年代初めにバブルが崩壊してから、日本経済はずっと低迷していますが、そのあたりの時期から、工学部出身者、とくに化学系の出身学生が、製薬企業の研究職に増えてきたのです。

別の言い方をすると、研究職で薬学部出身者と競合し始めたのが化学系の出身者です。

これは、以下の2つの要因があります。

  • 経済成長の鈍感よって、化学メーカーが採用枠を絞り始めた
  • 製薬企業の中で、新薬候補化合物の探索手法が変わり、有機合成化学の重要性が増した

その結果、薬学部卒であれば、すんなり製薬企業の研究職に就けた時代に変化が生じてきたのです。



研究職で薬学部出身者と競合し始めた農学・バイオ系

時代がすすむと、薬学部出身者はさらに研究職に就きにくくなってきます。

1990年代後半あたりから、「ゲノム創薬」「バイオ医薬品」「抗体医薬」といった、新しい新薬の探索手法や、化合物が注目されるようになってきたのです。

これらの分野で競争力を持つには、従来の薬学研究や、有機合成化学を中心とした化学研究では不十分でした。

その結果、バイオ分野に特化した、農学部系の出身者が製薬企業の研究職枠に入ってきたのです。

かつては薬学部出身者の楽園ともいえた製薬企業研究職枠は、化学系だけでなく農学系の出身者との競争の場になってしまったんですね。

2000年以降の製薬企業研究所の閉鎖や削減

薬学系研究職志望者の困難はさらに続きます。

2000年ころから、各製薬企業は業績の悪化や研究開発費の増大を強いられることになります。

新薬の開発が難しくなってきたためです。
「新薬候補化合物の枯渇」とか、「治療が比較的簡単な疾患については、おおよそ医薬品が開発されて一巡した」なんて言われています。

これにより、大手の製薬企業(特に外資系製薬)では、研究所の統合や、閉鎖を行いました。
そのため、単純に研究職枠の総数が減ってしまい、競争倍率が飛躍的に高まったのです。



薬学部6年制で大幅に減少した薬学部出身の研究職

2000年代の初めにはもう一つ、薬学系出身者が研究職に就きにくくなる事象が起きました。
それは薬学部6年制への移行です。

製薬企業研究職に就くには、「修士卒」であることが大半の企業では条件となっています。
この「修士卒」は6年制の学部である、薬学部や、獣医学部、医学部では「学部卒」にあたります。
そのため、6年制薬学部卒の学生は、修士卒の工学部、農学部出身者と戦うことになりますが、カリキュラム上、研究室での研究活動に費やした期間が圧倒的に少ないことになるのです。

企業側もそれを承知していますので、どうしても工学部や農学部出身者が有利になります。
私も面接官をしたことがありますが、薬学部6年制だと、就活時点では研究に関する理解が圧倒的に足りていない学生が大半です。

6年制薬学部出身者にとって、強い向かい風が吹いています。

薬学部卒で研究職に就くのはオワコンか?対策は?

以上のように、薬学部卒で研究職につくのはかなり難易度が上がっており、もはやオワコンかもしれません。
おとなしく薬剤師になれとでも言われているみたいです。

それでも、薬学部卒で研究職に就きたい場合どうすればいいのか?
方法はいくつかあります。
まず、4年制の薬学部を卒業し、大学院に進学することは有効です。
薬剤師免許はもらえませんが、研究室での経験という点で、工学部や農学部と対等になれます。
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もう一つは、薬学部特有の分野に進むことです。
例えば、薬学部にも有機合成系の研究室がありますが、これは化学系の出身者と競合してしまいますよね。
生物系の研究室では、農学部と競合します。

しかし、薬物動態や、製剤といった分野は、「薬学部特有」で、製薬企業でも需要が高いです。
これらの分野に進んでおけば、たとえ6年制薬学部でもチャンスはあるでしょう。

諦めるのはまだ早いかもしれませんね。

では!



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