後発医薬品促進の功罪:将来世代に引き継がれるかもしれない恐ろしい、”懸念材料”3つ

後発医薬品促進(ジェネリック医薬品)のメリット、デメリット:将来世代に引き継がれるかもしれない、恐ろしい”懸念材料”3つ


最近よく聞く後発医薬品、ジェネリック医薬品。
日本の医療費増大に歯止めをかけるべく、政府が率先して使用を促進しています。

この制度は、本当に高齢化する日本の医療、社会を救うのでしょうか?

目次

1. 後発医薬品とは
2. メリットとその享受者たち
3. 下がるのは医療費総額ではなく薬剤費総額
4. 3つの懸念材料
5. 最後に
6. 最後に

後発医薬品とは

後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、医薬品の特許が切れたのち,先発品と治療学的に同等であることが証明され,製造販売が承認された医薬品のことです。

日本では医療用医薬品(病院や調剤薬局で処方される医薬品)については、国家(厚生労働省と関連機関)によって審査、承認され、薬価が決定されます。

後発医薬品には先発医薬品の3~7割程度の薬価が付与されるため,ここ数年、後発品の使用促進のための施策が、患者負担および国民健康保険負担(すなわち医療保険財政の改善)を目的として進められてきました。

メリットとその享受者たち

メリットは単純にお金です。
誰かが金銭的メリットを受けることになります。

後発医薬品の使用率が上昇すれば、日本全体における薬剤費が減少します。
薬剤費の3割程度は患者負担、7割は健康保険負担(国民健康保険の場合)であるため、患者、国家財政ともにメリットがあります。

では、メリットを享受しているのは国家財政と患者である国民だけでしょうか?

ほかにもいます。

まずは、後発医薬品メーカ―ですね。
ここ数年の後発医薬品使用促進の流れによって、各後発医薬品メーカーの売り上げは急上昇しています。日本には後発医薬品メーカーが300社以上あるといわれていますが、軒並み成長をしていて、大手では毎年2桁成長なんて状態です。

そして、もう一つ、それは医療機関です。
これには多くの人にはなじみのない、診療報酬の制度が関与しているため、あまり大きく報道されていません。

日本において、平成25年度に約48%であった後発医薬品の数量シェアは、平成28年には67%まで一気に上昇しました。
近年の急速な後発品使用促進の駆動力となったのはこの「診療報酬」制度が改訂されたからでしょう。

「診療報酬」とは簡単に説明すると、薬局や病院で医師や薬剤師がおこなった医療行為。調剤行為に対する報酬のことです。
現在、後発品使用促進のために後発医薬品を処方、調剤した場合、医療機関にはインセンティブとしてこの診療報酬が加算される仕組みとなっています。
そのため、病院経営者や、薬局経営者は現場の医師や薬剤師に後発医薬品の積極採用を働きかけているのが現状です。

ここでポイントなのですが、診療報酬は医療費の一部であるため、この部分については逆に増大するのです。

下がるのは医療費総額ではなく薬剤費総額

後発医薬品の促進により、医療費の一部である、薬剤費の総額が下がります。
その分、患者と健康保険の負担は減少します。
これは確実なことです。
しかし、一方で、前述したように、「診療報酬」が加算されているため、薬剤費の減少分がすべて医療費総額の減少に寄与するとは限りません。
薬剤費の減少分に対して、増加した診療報酬額がどの程度なのか?
純粋に後発品促進が、医療費全体の抑制効果にどの程度寄与し(た)ているのか?

この点にフォーカスした包括的な報告はいまだありません。

3つの懸念材料

仮に、薬剤費の減少分が診療報酬の増額分を大きく上回り、医療費全体の抑制をもたらすとします。

それでもいくつか大きな”懸念材料”があります。
これらは現時点では表面化していませんが、「確実に」将来世代に引き継がれる恐ろしいものです。

医薬品産業全体の縮小

今後、薬剤費の総額が減少します。
日本社会が急速に高齢化していき、医薬品の数量が増加するかもしれませんが、どこかで頭打ちになります。
医薬品産業はもはや成長産業ではないのかもしれません。
2018年の医薬品市場は9兆円弱と言われています。
仮に、後発医薬品の使用によって市場が20%縮小すれば2兆円近い額が消失することになります。
その分法人税収入、GDPが低下するでしょう。

一方で、後発医薬品メーカーは乱立・膨張しています。
売り上げ規模の大きい先発品の特許切れ時には、30社以上が後発医薬品を発売します。
縮小していく市場に多くの労働者をかかえることになります。
(政府も現在の後発医薬品メーカーの数を適正とは思っておらず、今後、淘汰・整理されていくでしょう)

問題はこれらが急速に進んでいるということです。

少ない市場、限られた原資で多数の労働者を抱える市場、産業が、はてして高品質な後発品の供給をつづけることができるのでしょうか。

新薬開発への投資が低下する

後発医薬品の促進によって浮いたお金は、後発医薬品メーカー、健康保険、患者、医療機関へと流れていきます。
では、その分を一手に引き受けているのは誰でしょう?
お金は魔法のようにパッとあらわれては来ません。

答えは、新薬開発を手掛ける新薬メーカ―です。
さらに「先発品を販売しているメーカーは、その後発品を販売することができない」というルールがあります。後発医薬品使用が促進され、売り上げを失った先発メーカーはそれを補てんする手段は基本的にありません。
一部の先発医薬品メーカーは関連会社が後発医薬品を取り扱ったり、他の後発医薬品メーカーにauthorized generic医薬品としてライセンスアウトしていますが、失った売上を十分に補填するには至っていません。

その結果、先発医薬品メーカーは活動や規模を縮小せざるを得ません。
実際ここ数年で多くの大手メーカーが人員削減や、開発領域の縮小・撤退を行っています。

さて、ここにとても重要な問題があります。
先発医薬品メーカーが縮小を続けるとなにが起こるか?

それは、新薬が開発されないという事態です。

1つの新薬開発には膨大な額の資金が必要です。
その原資は言うまでもなく、新薬メーカーの売上ですが、後発医薬品の浸透や、市場の縮小により、その原資が減少します。
実際、アルツハイマー型認知症治療薬のような難易度の高い疾患について、多くの新薬メーカーが開発撤退をきめています。

後発医薬品が売れれば、後発医薬品メーカーにお金が流れます。
しかし、彼らは、あらたな後発医薬品を開発するために、その資金を投じます。
新薬は生まれません。

いまだ世の中には新薬開発が望まれる疾患がたくさんあります。

先発医薬品メーカーに利益を与えるということは、新薬の開発に投資するという側面もあるのです。この点を忘れてはいけません。

診療報酬増大による将来の医療費総額の増大

今回、国家は「後発医薬品の使用促進」と「診療報酬増加」の合わせ技で、総医療費の抑制を試みました。
しかしこれはもろ刃の剣だったのです。
じつは、後発医薬品を使用しなくても。薬価を下げる制度が日本にはありました。
日本には先発医薬品についても定期的に薬価を見直し、年々切り下げるルールがあるのです。
しかし、急速な高齢化と医療費増大に対応するため、今回のような促進策をとりました。

ここに、懸念があります。
それは、将来さらに医療費を削減したいときに、一旦増額させた診療報酬を切り下げることが難しいであろうという点です。
薬価と違い、診療報酬は、切り下げていく仕組み自体がないのです。
これには医師会や薬剤師会の反対があるのは必至ですし、何よりも、減額すれば現場での医療サービスの質に直結するのです。
おそらく、現場も患者もこれも受け入れることは難しいでしょう。

最後に

リーぱぱは、別に後発医薬品に反対ではありません。
実際一部の製品で、一部の新薬メーカーがもうけすぎた歴史も事実です。
しかし、現状のような国家主導の急速な推進策は、将来世代に大きなツケをはらわせることになるかもしれません。
今日述べた3つの大きな懸念点に有効な解決、対応策があることを祈ります。

将来世代にこれ以上ツケを払わせないように。

おわり
最後まで読んでくださってありがとうございました。


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